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【本-01】 フラット化する世界(08) T. フリードマン

それにしても、考えさせる中味の多い本であった。

結論   イマジネーション
   第十五章 二つの選択肢と人間の未来 - 11・9 vs 9・11
   世界が形作られた二つの日付 11/9(1989)と9/11(2001) このうち前者はベルリンの壁を開いた創造的なイマジネーションとなった。 ハンガリーの西ドイツ大使館に東ドイツの難民が逃げ込み、その2ヵ月後ハンガリーとオーストリアの国境出入り禁止を撤廃した。 その2ヵ月後、ベルリンの壁は民衆の前で打ち壊された。 そして後者は世界貿易センタービルにあったレストラン、ウインドウズ・オン・ザ・ワールドを破壊し、前者が破壊したと思われた厚い見えない壁を新たに築いた。 それぞれに、イマジネーションを持った人間たちがいて、語り合ってそれを実行したのである。 とりわけ後者は、人を殺すという悪意を持った形で。 

   現代は、今まで以上にイマジネーションの力が必要な時代である。 とりわけ、建設的なイマジネーションが今ほど重要な時はない。 JetBlueの創業者デビッド・ニールマンも、イマジネーションを働かせて会社を立ち上げてきた。 世界がフラットになるというのは二つの選択がある。 一つはイマジネーションを使って、他人を同じレベルまで引き上げるというもの。 もう一つは、他人を同じレベルまで引きずり落とすというもの。  もちろんわれわれは前者を望む。 そのためには、われわれはイマジネーションの主人になることが必要。 9/11のあと、米国は他の国に希望ではなく、恐怖を輸出するようになった。 ブッシュ大統領が世界から嫌われるのは、9/10の時代にあった、夢と希望の米国を9/12以降共和党、極右派の持つ税制や環境・社会問題に対する国内政策に利用したからである。

   eBay(SV)は、ユーザーの透明な評価をもって、オークション取引に対する基準としている。 その評価コミッティーには評価で認定された資格を取り消す権限もある。 そして、出店する多くの人たちの評価はそれぞれに優れている。 なんと米国の証券取引監視委員会(SEC)委員長が、eBayでの自分の評価が高いことに、心から満足して、わざわざ電話をしてきたことがあったそうだ。 このことから「人間を信じる」ことの価値を実感するとCEO メグ・ホイットマンも言っている。

   インドは実は世界第二のイスラム教徒の多い国であるが、 この50年間で持続的な民主主義の恩恵をこうむってきて、優秀なミドルクラスを出すコミュニティーにはインド政府は経済発展の機会を与えている。  独裁的な政治体制の中での怒りの行動としてのイスラム教になっていないことが、大きいと考えられる。 それと対照的なのは、パキスタンのイスラム教徒たちで、インドのイスラム教徒との差をこのように表現できる。 生活が豊かになり、きれいで素敵な家に住むことができたひとを見て、インドのイスラム教徒は「いつか、自分もそうなりたい」と思うのに対し、パキスタンのイスラム教徒は「いつか殺してる」と憎悪で見る違いであろう。

   フランス革命、アメリカの独立、インドの民主主義、eBayの基盤となる社会契約はすべてボトムアップから生まれている。 自分達の集団を改善する力は自分達が持つ。 そこにいる人がやることは、次は誰のせいかを問うのでなく、「何をするか」に集中できる。

   「人間は変わらなければいけないところまで追い込まれないと、変われない」「一つの好事例は1000の論理に勝る」。 アラブ人でNASDAQ上場を果たしたアラメックスという会社がある。こんな実例が、いくつか出てくれば、今までの環境を全く違う目で見ることができる。 

   世界には米国のような楽天主義が必要と考える。 それは夢多い(未来を考える)社会の方が、思い出の多い(過去に思い浸る)社会よりも、未来に向けて動き出す力が強い。 そしてわれわれも子供達も、未来にしか生きられない。

   著者あとがきは、この本のできるまでの綿密な情報収集と、情報収集先が格段に優れていることを示している。 そして、1年間という時間をかけて、仕上がった本である。 前著「レクサスとオリーブの木」を書いた20世紀と、現在が大きく異なることが良くわかるし、裏づけのデータも一つ一つが具体的になっている。

   訳者あとがきには、「本書は個人が(どういう立場にあるにせよ)グローバリゼーションの時代を生き抜くための必読の書である。」とある。 同感である。

   読み終わって感じるのは、日本の空白の15年が、社会構成の転換に対する適応不全だったということ。 これへの対処は、学んで実行するという、とても簡単なことから始めることである。 以前は先輩からだけ学べばよかったが、今は「誰からでも」学ぶ力が必要である。 情報はもはやフラット。 知識と知恵の使い方が問われる時代になったわけだ。 

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