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【復刻】 052 携帯電話とクレジットカード 19980913

日本で動き回ることも多くなりまして、携帯電話を買うことになりました。しかしこれが、もう大変。
手元にあるのは、パスポート、期限の切れた免許証、クレジットカード、どれもが日本での要件を満たさないのです。特に、最大手のN社の携帯電話は、ガードが固く、私はお客さんなのに、電話一台買うのにこんな事をしてまで保証確認が必要なのですか?と叫んでしまいそうになりました。

 

クレジットカードで携帯電話が買える米国
米国で携帯電話をかったときには、大きな電気屋さんに行って、自分で機種を選んで支払いはクレジットカードで即OKでした。ですから、クレジットカードさえあれば、誰にでも買うことが出来ます。

N社の必要書類
それに反して、日本で購入する場合、クレジットカードだけではだめです。いろいろN社のカタログに購入の際の必要条件を表にまとめてありましたが、例えばパスポートと本人の日本の公共領収書とか、期限の切れていない免許証と公共領収書とか、住民票と公共領収書という、私のような外国に住んでいる日本人には無理な条件ばかりです。そこで、クレジットカードではだめなのですか?と係の人に聞いたら、「それは、だめです」と、にべもない返事。結局、N社はあきらめて、I社へと行きました。そこでは、パスポートとクレジットカードと印鑑があれば、書類を書いてすぐ購入できました。

コストから見た購入手続き
N社の手続きは、N社から見ると安全サイドのように見えます。でも、クレジットカードこそ本来、その保証機能を持つべき物だと思います。それでこそ、クレジット(保証)カードと呼べるわけです。その保証機能が発揮されないとすると、今回のN社のように、N社が安全と思い込んでいる方法でしか、「許可」できないということになります。これは、社会的にはコストを押し上げることになるのですが、そんな事も言ってられない事情があるのかも知れません。それを、一方的にお客様に押しかぶせるのはどうかと思いました。

安全性(信用)確認の問題
ここで見えてくるのは、信用をどうやって確認するかということだと思います。米国のクレジットカードは、審査が厳しく、クレジット会社が確認できる半年以上の支払履歴がないと作れません。その支払履歴の中では、日本での利用履歴は数えられません。すなわち、米国内での利用をカウントするということです。その代わり、ひとたび作れれば、ほとんどあらゆる支払に利用できます。最近有名なのは、会社を設立するために、クレジットカードを利用して資金調達をするという方法です。それでも、利用限度額は厳しく設定されていますし、どんな店でもほとんど毎回、クレジット会社の承認を得てから利用できるようになっています。その時、電話回線を通して、クレジット会社にアクセスして、確認を取るわけです。ここでは、通信回線を利用しながら、信用の確認を行うわけです。N社の場合でも、この事がスムーズに出来れば、問題ないのではないのかと思ったわけです。

信用を築くことは、コストを下げることだ
日本では、現在毒入りの缶飲料などが出回ったり、地域の活動の中で、毒が入れられたり大騒ぎになっています。これを、現象の観点からだけでなく、社会に対する影響という点から考えると、大変なことであることがわかります。先週号でご報告しましたように、世界市場で競争するにはどうしても低コストの社会に移行することが必須になります。その時に、コストのかかる要因は極力排除して行かないと、ひたすら、立ち後れるだけです。F.フクヤマが、かねてから指摘しているように、信頼の成立しない社会は、コストがかかり、暮らしにくく、闇の世界が支配しやすいということになります。ですから、携帯電話の購入のときのように、信用確認に独自規格を持ち込むようなことは、出来るだけ避けるべきだと思います。そして、その時に知恵を出して、どうしたら、早く確実に信用の確認が出来るのかを考えるべきだと思います。特にN社は、内外から指摘されている日本の高い通信コストをどうしたら下げられるかを真剣に考えるべきではないかと思います。通信インフラの立ち後れの大きな原因は、通信コストにあるというのは、今まで沢山の場面で見えてきているのですが、有効な手が打たれていません。どんなお店からでも、端末から信用確認が低コストで出来れば、お互い貴重な時間や、資源を使わずに済むのではないでしょうか。今回、携帯電話購入の際に発生した問題も、私には通信コストが安ければ、発生しなかったのではないだろうかとさえ思えるのです。


追伸
最近、面白い本を読みました。ビジネスをたち上げたり、現在のビジネスを再考するときなどに、参考になるのではないかと思いますのでご紹介します。いかに、ビジネスに個性が重要か、そしてビジネスがエキサイティングなものであるということがとても良く分かります。

「世界を動かす巨人たち」 シリコンバレーの16人の企業家たち
ラーマ・D・ジェイガー、ラファエル・オーティズ著
 日暮 雅通訳  トッパン  2200円

 

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