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【復刻】 107 企業トップの持つ役割 20000627

ネットワーク社会がだんだん見えてくると、会社のトップによって対処する手法や考え方や戦略が違うことが企業の方向性を決める上で大きな差になってきているように思う。これからの時代はいかに「個」の持つ多様性を企業の中に取りこむかという点がポイントになるからだと思う。言いかえると、ネットワークと言う「個」が介在して成立する仕組みに、どのように企業としてそれらの「個」に対して求心力を持たせるかということである。こんなことを考えていたら、書店で月刊文藝春秋の6月臨時増刊号は「どうする?どうなる?私たちの21世紀」という特集を見つけた。以前ご紹介したIMD(国際マネジメント研究所)のデータも特集されていて、世界の視点からの日本の現状が、良くわかるようになっている。ぜひご一読いただきたいと思う。

過去の蓄積という慣性力
企業という組織体が、その中でほとんどあらゆるカバーができていた時代はつい最近までのことである。住居やレクレーション施設などとりわけ大企業はすべて自前で行える力があった。しかしながら、所詮それらの運用も資産価値の下落に伴って、維持できなくなってきている。これは、企業そのもののが目的とする活動ではないから、切り捨てることはそうむずかしくはないはずである。しかし、人によっては、入社の動機が厚生施設が良いことで入社した人もいるわけで、当時の会社の思想が、社員の心に残っていることも多い。過去の蓄積が慣性力となり、現在の思想や行動を規定して行く部分である。そうは言っても、背に腹を変えられないご時世であるから、従来の価値観を切り替えるトップの手法は重要な企業戦略となる。

ますます「個」は外へと向かう
これは、企業コンサルタントそしている私の友人からの情報であるが、ネットワークで仕事をするようになると、企業への定着率が悪くなり、離職率が現在の3倍から5倍くらいにすぐ変化すると言う。これは、ネットワークの中で考えると結構重大な問題だと思う。その理由は、ネットワークで仕事をするときに、重要な少数の人をネットワークの要所に配置していることと、仕事の継続性が守れないことによる。前者は、場合によると会社と言う組織が動かなくなることとつながっているし、後者は会社の文化の継承ができないことを意味する。これだけ、「個」が外へと向かうことが現実になると、従来の企業観は大きく様変わりする。すなわち、「個」が出入りしても影響を受けない組織や企業風土にすることが必要になってくる。

「個」に何を期待するか
この状況で、経営者が考えるべきことは何だろうか?いろいろあるのは間違いないが、「個」の行動を押さえることではなく、「個」の開放性を取りこむことである。この間のインターネットホームページで東芝が狙われてしまったように、今や「個」の持つ力はやり方によっては、大企業に拮抗することも可能になってきている。今までは、大企業しか事業原資を持っていなかったので、個人が大きな事をするには、大企業に入ることが近道であった。しかしながら、今や原資がネットワークという方法で公開されてきているし、もともと大企業といえども「個」によって事業が動かされていたことに変わりはない。そうすると、21世紀には「個」を生かしきる企業しか生き残れないということになると思う。その、「個」を生かしつつ企業の求心力を生み出すということこそ、これからの経営者に望まれる指導制と戦略性である。

歴史に学ぶことは多い
この難しい時代を乗り切るには、歴史を学ぶこともひとつの大きなステップだと思う。あらゆることは、問題意識さえあれば常にヒントを含んでいると私は信じている。その中で、これからの日本人の一人一人が学んで行くことが、21世紀の社会を大きく変える力になるだろう。そのときに、学問の目的、企業の目的をどこに据えて進んで行くのか、今重大な時期にさしかかっていると思う。しかも重要なのは、学ぶだけでなく応用動作をどうするかと言うことがキーとなる点である。IMDのデータでも従来の権威や知識はその価値を大きく減らしていると警鐘を鳴らしている。それは、時代の変化が激しいため、従来型の思考と対処では対応できないことを意味している。それはそうであろう。今まで人類が経験してきていない変化に遭遇しているわけだから。このような時代は、すべての「個」が一生懸命考えて進むことしか解決法はないと思う。そのときにこそ、一人一人が時代を変えうる大きな「個」と言う存在を実感するのだと思う。

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