【復刻】 0021 フットボールというスポーツ 19980126

今日は、スーパーボウルの日です。これは、米国で一番人気のあるプロフットボールのチャンピオンを決める試合の日です。昨年の８月から始まったシーズンでナショナルリーグとアメリカンリーグを勝ち残ってきたチーム同士が、全米ナンバーワンをかけて対決します。今年は、グリーンベイ・パッカーズとデンバー・ブロンコスが戦いました。結果はデンバーが31-24でグリーンベイを破り、スーパーボウル初優勝を飾りました。日本でも、最近はフットボールの試合が頻繁に開かれるようになってきましたので、ずいぶん浸透してきているのではないかと思います。今回は日本のプロスポーツと比較したり、文化としての背景を考察してみたいと思います。

熱狂的な地元の応援
フットボールのチームは、地域の代表です。地域は「こぞって」「地元の」チームを応援します。これは、日本のプロ野球と比べると際立って違っているように思いました。日本はどの地域でも、巨人軍ひいきの人が、少なからずいるようですが（最近は変わってきているかもしれませんが）米国ではほとんどの人は地元のチームを一生懸命応援します。地元には、５万人くらい収容できるフットボールスタジアムがあり、地元チームの試合のときは、満員になるといいます。切符は、シーズンチケットという１シーズン特定の席で買い切りのものが人気があるそうです。もちろん、会社で買う場合もありますし、個人も買います。人気チームのシーズンチケットは、何年か待たないと買えないという話もあります。

面白いルール
このゲームの面白さは、同じチームでも攻撃のときのメンバー編成と、守備のときのメンバー編成がまったく違うということでしょう。すなわち、攻撃のプロと、守りのプロとが組み合わされて、一つのチームとなります。これは、数あるプロスポーツの中では大変ユニークなしくみだと思います。プロ野球にはＤＨ制がありますが、これは対象は投手だけです。
選手はヘルメットやガードに固められて、ボールを抱えて走りまわりぶつかり合うわけです。プロスポーツでは選手の給料もいいので、学校でも人気のあるスポーツです。ですから、足の速い素質のいい選手も多くいます。１１０Ｋｇくらいの体重の選手でも１００メートルを１０秒台で走る人も多いといいます。

指揮命令系統
コーチが選手の指導をします。これは、もと名選手だからといってなるのではなく、どれだけ指導力があり、選手を把握できるかで決まります。コーチの給料は高く、選手に引けを取らないくらいもらいます。そして、コーチはなぜか、試合参謀を観客席に送り込んで、高いところからチームの状況を把握して、試合展開に役立てます。そして、選手はコーチに絶対服従です。そして、攻撃のときにはクオーーターバックという、選手の中の現場指揮官が作戦を遂行します。試合の結果に対しては、コーチの責任が大きく問われます。

ＴＶ放映と観戦動員の関係
地元チームのＴＶ放映については、面白いルールがあります。試合の切符が完売しない場合は、地元のＴＶ放映は行われないというものです。すなわち、客席が埋まらない限り地元の人はＴＶで観戦は出来ないのです。こちらには、スポーツ番組専門のＴＶチャンネルもあり、試合がＴＶで放映されるときには、家庭だけでなくスポーツバーという、食事をしながらゲームの見られる店は、ものすごく混み合います。

このスポーツと、ビジネスのしくみ
このスポーツは、見ているととても動きが速く、ダイナミックで面白いです。この動きを見ていると、私には米国のビジネスのやり方をそもまま反映しているように思えるのです。攻め、守りそれぞれ得意な人間を集めてチームを作り、コーチに指導されて動くのです。攻めの目的は、ひたすら点を取ること、守りはひたすら点を取らせないことです。そして、結果に対してはコーチが一切の責任を取るという、ビジネスのしくみそのものを反映しているようです。しかもそれが、地元に立脚して成立しているところなど、米国の地方の力を見せ付けているように思います。
シリコンバレーも現在の活況は、わずか５年ほど前に地元を活性化しようという動きから始まったといいます。地元の活動を地元の活気に戻すという意味で、フットボールは一つの面白い成功例であり、代表的な米国の活動方式はないかと思っています。